今回は「インドのミームという種類の櫛に、ロゴを自分で入れられるか確かめたい」というご相談を受け、当店の無料試し押しサービスで検証を行いました。
加工対象は、半月状の木製コーム(ミーム材)と樹脂コームの2種類。
加工道具は温度調整なしの300W半田ごて+真鍮製焼印、温度調整可能なホットスタンプTW350+真鍮製焼印の2方式です。
結論から言うと、いずれの道具でも「焼き目や型は入る」ものの、コーム特有の曲面・段差によって印面が均一に当たらず、ムラが出やすい結果でした。
木製・樹脂ともに、ゴムマットで受けを作る、押圧を強める、印字位置をならす等の下準備が品質を左右します。
素材への焼印・型押し加工のポイント
半月状コームは表面が水平ではないため、平板に置いて押すと印面の一部しか接触しません。今回は作業台にやわらかいゴムマットを敷くことで、素材の微妙な湾曲を吸収させ、均一に圧がかかる状態を作りました。
素材の曲りがきつい箇所はムラが出やすく、可能であれば、あらかじめ焼印などをするエリアを平滑化(ならし)してから加工すると安定します。
木製コームは、焦げ色のコントラストでロゴなどが読みやすくなります。樹脂は温度が合えばくっきり凹みますが、溶融バリの後処理が前提になります。
ホットスタンプと半田ごてを使った焼印・型押し加工の詳細
加工方法①:焼印(半田ごて)/木製コーム(ミーム)
使用機材: 300W半田ごて+真鍮製焼印
加工温度: 350〜400℃相当
加工結果:
木製(ミーム)に対しては焼き目自体はきれいに入ります。ただし半月形で水平が出にくく、印面の一部が先に当たってしまうため、濃淡のムラが発生します。
ゴムマットを敷き、コームの逃げを抑えながら強い押圧で当てると改善しますが、湾曲の強い部分では完全な均一化は難度が高めです。
加工のポイント・注意点
作業前に焼印加工をする範囲だけでも軽く面出し(ならし)をしておくと、仕上がりが安定します。押し当て時間は長過ぎると焼にじみがおこるため、注意が必要です。
加工方法②:焼印(ホットスタンプ)/木製コーム(ミーム)
使用機材: ホットスタンプTW350 + 真鍮製焼印
加工温度: 320℃
加工結果:
道具を変えても、曲面による当たりムラという本質課題は同じです。一方、比較的平らな部分を狙ったサンプルでは、印面全体にきれいな焼き目が入りました。温度維持が安定しているため、ホットスタンプでの焼印加工は同じ条件で量産時に再現しやすいのが利点です。
加工のポイント・注意点
セット時にコームの山谷がテーブルと平行に近づくよう位置合わせを取るのがコツ。受けにゴムマットを用い、強めに押し当てる必要があります。
ホットスタンプは加工する位置を予め決め、素材を同じ位置にセットできるようにしておくと、作業効率が上がります。
加工方法③:型押し(ホットスタンプ)/プラスチック製コーム
使用機材: ホットスタンプTW350+真鍮製焼印
加工温度: 160℃
加工結果:
樹脂が溶け始める温度帯に設定して型押し(凹み)を作成。曲面のため、刻印の入り方にムラが出やすい点は木製同様です。さらに、溶けた樹脂がバリ状に残るため、後処理(面取り・バリ取り)が必要になります。
加工のポイント・注意点
ゴムマットで押し付け時の“逃げ”を吸収しつつも、圧はしっかりとかける必要があります。温度は高すぎると溶けすぎてしまい、低すぎると型がしっかりと入りません。
端材などで型の入る最適な温度を調べます。温度がわかれば素早く押し付け型を付けます。その後バリを取って表面を整える必要があります。
まとめ
木製コーム(ミーム)・樹脂コームともに、焼印/型押しは可能でした。道具差のは限定的で、素材の平面度・段差解消が成否を分けます。
木製コームへの焼印は、350〜400℃(半田ごて)、320℃(ホットスタンプ)で良好。印字位置をならす・ゴムマット・強い押圧の三点で焼きムラが減り、よりきれいな仕上がりにすることができます。
樹脂への型押しは、約160℃で可能でした。ただし溶けた際にでるバリが生じやすく、後処理が必要です。
素材や形状によって最適条件は大きく変わります。不安があれば、加工予定のサンプル素材をお送りください。専門のスタッフが加工可能かなど、実際に試させていただきます。