
今回は、タンニン鞣しのバケッタレザー(ショルダー部位)のキーホルダーに「ロゴをホットスタンプで加工した際の仕上がりを確認したい」というご依頼に基づき、試し押しを行いました。
事前に電気式焼印(100W)と手打ちの打刻加工でも検証されていましたが、イベントでの安全面から電気式焼印は不採用、手打ち打刻は再現性が低い結果だったとのことです。
革製品への加工は、素材の種類や厚み、形状によってその仕上がりが大きく左右されます。特に、キーホルダーのように小さなアイテムで、かつキーリングなどの金具が付いている場合は、加工時の安定性確保が重要となります。
本記事では、こうした背景を踏まえてこのバケッタレザーのキーホルダーに対し、ホットスタンプでの最適条件や注意点を解説します。
素材への加工のポイント
今回のキーホルダーはしっかりとコシのあるバケッタレザー。硬めの革では版を確実に沈ませる必要があるため、押圧はやや強めが基本となります。

また、端部にキーリング金具が付いているため、そのままでは印面が水平に当たりません。ホットスタンプでの加工時は、金具側に下敷きなどで底上げし、加工面を水平に保ちました。
これにより、焼印が素材に均一に当たるように調整し、安定した加工を可能にしています。また、素材が硬い革であるため、柔らかいゴムマットなどを敷くことで、微妙な凹凸を吸収し、より均一な焼き目を実現することも有効です。
ホットスタンプによる型押し加工
使用機材: ホットスタンプTW350/真鍮製ロゴ版
加工温度: 160℃(サンプル素材が1点につき、十分なスペースがなかったため本設定のみで検証)
加工結果(成功点・課題)
ホットスタンプの設定温度を160℃で強めの押圧で、ロゴの立ち上がりは明瞭に入りました。硬めのバケッタレザーに対しても型の入り具合は良好です。一方、ロゴの隙間が狭い部分では軽微な焼きにじみが確認されました。
これはホットスタンプでの加工時の温度・圧力・滞留時間のバランスと、革表面の油分・繊維密度による熱の回り方が影響したと考えられます。これは、革の繊維が熱によって膨張し、デザインの狭い部分で隣接する線と線がくっついてしまうために起こります。
加工のポイント・注意点
シャープな仕上がりを求める場合は、設定温度を130℃程度に下げることで、焼きにじみを軽減できる可能性があります。ただし、温度を下げすぎると、革が硬いため焼き目が浅くなり、ロゴがはっきりと出ないことも考えられます。
ロゴの細線や内側のヌケ形状が多い場合は、温度をやや下げつつ滞留時間や押圧で微調整することで対応できますが、今回はイベント用途での視認性と作業スピードを考慮すると、160℃前後+下敷きでの水平出しの組み合わせが実運用しやすいと判断しました。
まとめ
バケッタレザー製キーホルダーへのロゴの型押しは、160℃で加工を行った結果、ロゴは明確に表現されましたが、デザインの狭い部分には焼きにじみが生じる可能性があることが分かりました。これは、素材の特性と温度設定のバランスが非常に重要であることを示しています。
素材の状態をみながらホットスタンプの設定温度130~160℃と押圧、滞留時間を調節することで素材に対しての最適化ができます。
また、キーリングなどのパーツが付いている場合は、加工面を水平に保つための事前の準備が不可欠です。ゴムマットなどの下敷きで底上げして当たりを均一化することで、仕上がりの精度を高めることができます。
加工に関するご相談やご質問がございましたら、お気軽にお問い合わせください。