医療機関のお客様から「DOCTOR MADE」のインソールへの印字可否についてご依頼をいただきました。厚みや素材の異なる2種類のインソールに対し、最適な加工方法と条件を探るべく、ホットスタンプを用いた型押し加工を検証しました。
本記事では、インソールのような特殊な素材への加工におけるポイントや注意点、そして鮮明な仕上がりを実現するための秘訣を解説します。
素材への加工のポイント
今回の試し押しでは、厚み約6.0mmと約4.7mmの2種類のインソールを使用しました。インソールは柔らかく、内部にクッション材が挟まっているものもあるため、均一な圧力をかけることが難しい素材です。このような袋状や柔らかい素材への加工では、安定した加工結果を得るために、適切な作業台の調整や工夫が不可欠となります。
特に、柔らかい素材の場合、押印時に十分な圧力がかかりにくく、デザインの内側が浅くなる傾向があります。そのため、加工時には素材の特性を理解し、機材の設定や押し付け時間を慎重に調整することが重要です。
実際の加工では次のような工夫が有効です。
・作業台の水平出し：踵側・つま先側の高さ差を当て木や下敷きで調整し、印面を平行に当てる。
・下敷き材の選択：硬い金属板またはやわらかいゴムマットを敷いて、局所の段差を吸収しながら全体の押圧を確保。
・押圧時間の安定化：湾曲部は保持時間をやや長めに設定（過加熱に注意）。
ホットスタンプを使った型押し加工の詳細
検証1：厚み約4.7mmインソール（設定温度150℃）
使用機材: ホットスタンプTW350、真鍮文字アルファベット
加工温度: 150度
加圧時間：10秒
加工結果:
140℃までは型がつかず、150℃でも熱量が不足していたため、十分に型がつかない仕上がりとなりました。
加工のポイント・注意点
湾曲面は接触面積が小さくなり、温度が同じでも実効熱量（熱×時間×接触）が不足しがち。150℃域で使うなら押圧強め＋保持長めなどの補正が要ります。
検証2：厚み約6.0mmインソール（設定温度170℃）
使用機材: ホットスタンプTW350、真鍮文字アルファベット
加工温度: 170度
加圧時間：10秒
加工結果:
型は入るが、内部のやわらかい層が押圧を吸収し、文字内側がやや浅い仕上がりとなりました。
加工のポイント・注意点
厚み約6.0mmのインソールは、内部に柔らかい素材（白く見える部分）が挟まれているため、押印時に十分な圧力がかかりにくいことが判明しました。このタイプの素材では、より高い温度設定や、押し付け時間の調整が必要となる場合があります。
検証3：厚み約4.7mmインソール（設定温度170度）
使用機材: ホットスタンプTW350、真鍮文字アルファベット
加工温度: 170度
加圧時間：10秒
加工結果:
クッション層がないため、熱と圧が効率よく伝達してくっきりとした鮮明な仕上がりとなりました。
加工のポイント・注意点
厚み約4.7mmのインソールで、クッション層がない素材の場合、170℃の設定温度で非常に鮮明な型押し加工が可能です。素材の構造が加工結果に大きく影響することが分かります。
箔押しや焼印加工について
箔押しの可否
今回のインソール素材は柔らかく十分な圧力がかからないため、箔押しは不可という結論です。箔押しは「熱×圧×時間」のバランスで箔を転写しますが、基材が沈み込むと必要圧が得られず、箔が定着しません。
焼印（焦がし）加工の可否
合皮・人工皮革は高温で溶融・変形しやすく、焼き目が乗らないため、焼印加工は非対応です。焦げ色で表現する「焼印」ではなく、型押しまたは条件が合えば箔押しでの表現をご検討ください。
まとめ
厚みの異なる2種類のインソールへの型押し加工では、**設定温度170℃**での加工をおすすめいたします。特に、インソールの裏地や中地（クッション）が貼られていない素材は、より鮮明な仕上がりで加工できることが確認できました。また、厚みの薄い約4.7mmのインソール素材は、加工に適しており、鮮明な仕上がりを期待できます。
デザイン作成にあたっては、線幅は1.5mm以上、文字間の隙間は約1mm程度確保していただくことで、ロゴの仕上がりがより安定すると考えられます。
素材によって加工の難易度や最適な方法が大きく異なるため、実際に試してみないと分からないことが多いのが実情です。弊社では、お客様の素材に最適な加工方法を見つけるための「無料試し押しサービス」を提供しております。ぜひお気軽にご利用いただき、貴社製品の可能性を広げてください。
