
今回のご相談は、お預かりした化粧箱とラベルに対し、ロット番号および賞味期限の押印に、ホットスタンプと真鍮製文字スロットが使用できるかどうかの検証依頼でした。

化粧箱は折りたたまれた状態、ラベルは平滑な素材であり、それぞれ異なる特性を持っています。特に、化粧箱のような立体的な素材への箔押しは、素材の平滑性や構造が仕上がりに大きく影響するため、事前の検証が非常に重要となります。
素材への加工のポイント
立体構造の「化粧箱」は、平面が出しにくい

化粧箱はもともと立体成型されたパッケージのため、展開図のように完全な一枚板の紙ではありません。今回の試し押しでも、折りたたんだ状態で蓋の側面に近いエリアへ印字していますが、次のような影響がありました。
・箔押し位置の裏側に折り返しや段差がある
・作業台に置いたとき、箱の構造上どうしても一部が浮きやすい
・真鍮文字側にも、ごくわずかな段差・不整があり、印面全体が均一に当たりにくい
箔押しは「温度・圧力・時間」のバランスだけでなく、版と素材がどれだけ平行に、面で当たっているかが仕上がりを大きく左右します。

化粧箱のように立体感のある紙箱では、箔押し位置の直下をゴムマットなどで支えて局所的に平面を作る、作業台側で高さ調整をして素材の浮きを抑えるといった、下準備(治具づくり)が箔押しの仕上がりの品質に直結する素材だと言えます。
ホットスタンプを使った箔押し加工の詳細
ここからは、実際にホットスタンプとお預かりした真鍮製文字スロットを用いて行った、化粧箱とラベルへの箔押し加工の詳細と、そこから見えてきた成功点と課題点を解説します。

加工方法①:箔押し(ホットスタンプ)/化粧箱
使用機材:ホットスタンプ+真鍮製文字・文字スロット
取り付け方法:ボンディングテープ(耐熱両面テープ)で固定
箔の種類:黒色箔(紙・ラベル用)
設定温度:110℃
加工結果

ロット番号・賞味期限ともに、全体としては読めるレベルで箔押しされていますが、一部の細い文字や下段の数字がつぶれ気味・濃淡ムラありという結果になりました。
化粧箱は、折り目や接合部など、わずかな凹凸が存在します。ホットスタンプで圧力をかけた際、印面がこれらの凹凸に均一に当たらず、箔が定着しない部分が生じてしまうのです。
加工のポイント・注意点
化粧箱のような立体構造を持つ素材や、平滑性に欠ける素材への箔押しを行う際は、以下の点に注意が必要です。
1.作業台の調整: 素材の凹凸を吸収するために、作業台に柔らかいゴムマットなどを敷くことが有効です。これにより、印面が素材全体に均一に接触しやすくなります。
2.印字位置の選定: 可能な限り、素材の中で最も平滑で、下に構造物がない部分を選んで印字することが、ムラを減らすための基本となります。
加工方法②:箔押し(ホットスタンプ)/ラベル
使用機材:ホットスタンプ+真鍮製文字・文字スロット
取り付け方法:ボンディングテープでヘッドに固定
箔の種類:黒色箔
設定温度:110℃
加工結果

ラベルへの箔押し加工については、設定温度110℃で問題なく安定して加工できることが確認されました。ロット番号や賞味期限といった細かな文字も、ムラなくシャープに印字されています。
加工のポイント・注意点
ラベルは化粧箱と比べると、素材面がフラットで、厚みも均一なため、今回のように真鍮文字+ホットスタンプでロット番号や賞味期限を入れる用途には非常に相性が良い素材です。
温度についても、110℃という比較的低めの設定でしっかり箔が定着しています。これは、紙ラベルと黒色箔の組み合わせが良く、箔ののり(接着層)が適切な温度帯で働いている状態と言えます。
まとめ
今回の化粧箱とラベルへの箔押し検証から、以下の結論が得られました。
•ラベルのようなフラットな素材への箔押しは、安定して加工が可能であり、ロット番号・賞味期限の印字も問題なくおこなえます。
•化粧箱への箔押しは、素材の平滑性や構造に起因するムラが生じる可能性があり、安定した仕上がりを得るためには、作業台の調整などの工夫が必要となります。
素材の平滑性や厚み、立体・曲面の有無などによって、同じホットスタンプ・真鍮文字を使っても仕上がりは大きく変わります。
特に、ロット番号や賞味期限のような小さな文字を扱う場合は、素材側の条件がシビアになることをあらためて確認できました。
今回のように一見箔押し加工がやりやすそうな素材でも、実際に試してみると問題点が出てくることもあります。ですので、加工予定の素材に箔押しなどをするにあたって不安などがあればぜひ無料の試し押しサービスをご利用ください。

























