
今回は、「壁紙にロゴを印字できるものを探しています。いろいろ試してみたいです。」というご相談をいただきました。
壁紙という素材は、その種類によって表面のテクスチャ、素材、裏地のクッション性などが大きく異なります。特に、ロゴを美しく、かつ恒久的に印字するためには、素材の特性を見極めた上で、最適な加工方法と条件を見つけ出す必要があります。
本記事では、お客様からお預かりした全14種類の壁紙に対し、当社のホットスタンプを用いた箔押し加工と型押し加工の2種類を試した検証結果をご紹介します。
素材(壁紙・クロス)の特徴と加工の難しさ

壁紙への加工において、最も大きな課題となるのが、その素材の多様性と形状です。
今回お預かりした壁紙は、
・表面がフラットに近いもの
・表面に大きなエンボス(凹凸)柄が入ったもの
・裏面にクッション層を持つ、厚みのあるタイプ
といった、質感も厚みもさまざまな14種類です。一見どれも「平らなシート」に見えますが、実際に加工してみると、「クッション層があるものは押した瞬間に沈み込みやすい」「大きな凹凸柄のあるクロスは、版が当たらない部分が出やすい」といった理由で、同じ条件でも仕上がりに差が出ます。

壁紙のように「薄くて、ところどころ柔らかい」素材でも、下敷きの硬さや素材の支え方が品質を左右します。
壁紙やクロスに限らず、薄い素材にホットスタンプで加工する場合は、
・下に硬い板だけを敷くと、凹凸の高い部分だけが強く押される
・やわらかすぎる受け材だと、沈み込みが大きくなり輪郭がぼやける
という現象が起こりやすくなります。

対策として、やわらかめのゴムマットなどで受けを作り、素材の沈み込みを適度に吸収させると、印面全体に圧が伝わりやすくなります。
上記の内容を踏まえて、今回はホットスタンプを使用し、温度をコントロールしながら、箔押しと型押しの2種類を検証しました。
壁紙(クロス)への加工の詳細
加工方法①:箔押し加工(ホットスタンプ/革用箔)
使用機材: ホットスタンプ+革用箔
加工温度: 110〜120℃
加工結果

クッション層のない一般的なクロスでは、110〜120℃という比較的低めの温度でも、箔がしっかりと定着し、ロゴも読みやすい仕上がりになりました。

一方で、表面にエンボス(型押し)柄を持つクロスでは、凹凸形状の影響を受けて、箔面に若干のムラが発生しています。

これは、凸の高い部分にだけ強く圧がかかり、谷の部分では箔が十分に当たらなかったためです。
表面に大きな凹凸がある素材では、均一な圧力がかからず、箔が定着しない、またはムラになる可能性が高まるので、箔押加工では注意が必要です。
加工方法②:型押し加工(ホットスタンプ/120℃-160℃)
使用機材: ホットスタンプ
加工温度: 120℃/160℃
加工結果(120℃)

120〜140℃程度の温度帯では、エンボスの立体感が弱く、輪郭がやや不明瞭な、やわらかい印象の仕上がりになります。

表面の樹脂層を強く溶かさず、浅めの凹みを付けるイメージなので、「さりげなくロゴを入れたい」「強い凹凸ではなく、軽い型押し表現にとどめたい」といった場合には向いている温度帯と言えます。
加工結果(160℃)

同じクロス素材に対し、160℃に設定して型押しを行うと、エンボスの凹凸ははっきりする一方で、温度が高くなり過ぎた場合には注意が必要です。

160℃を超える温度域では、壁紙の表面層の樹脂が溶けすぎてしまい、下地が露出するリスクが生じます。壁紙の素材や厚みに応じて、140℃〜150℃程度の最適な温度帯を見極めることが重要です。
まとめ

今回の壁紙への試し押し検証から、以下の結論が得られました。
1.箔押し加工は、多くの壁紙で実現可能:裏面にクッション層がない、比較的平滑な壁紙であれば、革用の箔の設定温度(110℃〜120℃)で箔押し加工が良好に定着します。
2.型押し加工は、温度管理が成功の鍵:シャープな凹凸表現のためには140℃〜150℃程度の温度が理想的ですが、160℃を超えると素材を損傷するリスクがあります。素材の特性に合わせた繊細な温度調整が必要です。
3.素材の特性が結果を左右する:壁紙の表面の凹凸や裏地のクッション層は、加工のムラや定着に直接影響を与えます。
同じ「壁紙」「クロス」という分類でも、材質・表面形状・構造によって適した温度や加工方法は大きく変わります。今回のように、無料の試し押しサービスをご利用いただき、加工の可否や仕上がり状態を確かめていただくのが最善です。
加工予定の素材に箔押しや型押しができるのか?どんな感じで仕上がるのか?と不安がある場合は、是非お気軽にご相談ください。

























