
革製品にロゴや文字を入れる方法として人気のある「箔押し加工」。金箔や銀箔を使うことで、革の表面に高級感のあるデザインを表現できます。
しかし、革の種類や表面の状態によっては、思ったように箔が付かないこともあります。
今回は、表面に独特の凹凸があるサメ革(シャークレザー)への箔押し加工をご紹介します。
お客様からは「シボのあるサメ革に、ベタ部分や細い線をきれいに箔押しできるか確認したい」というご相談をいただきました。
シボとは、革の表面に見られる細かな凹凸や模様のことです。サメ革はこの凹凸が特徴的で、一般的な平滑な革とは異なり、箔押しの際に加工面全体へ均等に圧力をかけることが難しい素材です。
今回は厚みの異なる3種類のサメ革を使い、ホットスタンプによる箔押し加工を検証しました。
箔の付き方やかすれの状態、押し付け時間による影響など、実際の加工結果を写真とともに解説します。
サメ革への箔押しで注意したい表面の凹凸
サメ革への箔押しで特に注意したいのが、表面のシボによる高低差です。
箔押しは、熱した金属製の版を箔の上から押し当て、熱と圧力によって素材の表面に箔を転写する加工方法です。
表面が平らな革であれば比較的均一に圧力をかけられますが、シボのあるサメ革では、版が接触しやすい凸部分と、接触しにくい凹部分が生じます。
そのため、凸部分には箔がきれいに付いても、凹部分には箔が付かず、デザインがかすれたように見える場合があります。
特に、ロゴのベタ部分(広い面積を塗りつぶした部分)や細い文字・線では、こうした凹凸の影響が仕上がりに現れやすくなります。

今回使用した加工機材と作業台
今回の試し押しでは、温度調節ができるホットスタンプと真鍮製の焼印(刻印)を使用しました。
ホットスタンプは、設定した温度に加熱した刻印を押し付けることで、箔押しや型押しを行う機械です。
サメ革の凹凸に対応するため、今回は加工する素材の下にゴムマットを敷いて作業しました。

ゴムマットを使用することで、押し付けた際に素材を下から支えながら加工できます。ただし、今回の検証では、ゴムマットを使用してもサメ革の深い凹部分まで均一に箔を転写することはできませんでした。
ホットスタンプを使ったサメ革への箔押し加工
今回お預かりしたサメ革は、厚みが0.7mm・0.6mm・0.5mmの3種類です。
いずれもホットスタンプの設定温度を120℃とし、ベタ部分の多いデザインで箔押しを行いました。
使用機材:ホットスタンプ・真鍮製焼印・ゴムマット
加工温度:120℃ / 押し付け時間:約0.5~1秒
① 厚さ0.7mmのサメ革への箔押し
まずは、厚さ0.7mmのサメ革への箔押しです。
ホットスタンプを120℃に設定し、ゴムマットを敷いた状態で加工しました。サメ革の表面には凹凸があるため、押し圧は強めに設定し、約0.5~1秒間押し付けています。
加工した結果、箔そのものはきれいに転写できましたが、シボの凹部分には箔が十分に付きませんでした。
特に、広い面積を箔で埋めるベタ部分では、革の表面模様に沿って箔が途切れ、かすれが生じています。



② 厚さ0.6mmのサメ革への箔押し
続いて、厚さ0.6mmのサメ革への箔押しです。
加工温度は0.7mmの場合と同じ120℃ですが、革が薄くなったため、押し圧をやや弱めに調整しました。
こちらも、表面の凸部分には箔がきれいに付きましたが、凹部分には箔が付かず、かすれたような仕上がりになりました。


金箔・銀箔ともに、箔が転写されている部分は確認できますが、シボの凹部分ではデザインが途切れています。
革の厚みが変わっても、表面の凹凸が箔の付き方に影響するという点は共通しています。
③ 厚さ0.5mmのサメ革への箔押し
最後に、今回の中で最も薄い0.5mmのサメ革への箔押しです。
こちらもホットスタンプの温度は120℃に設定し、ゴムマットを敷いて加工しました。
革が薄いため、押し圧は弱めに調整しています。
加工結果はほかの厚みと同様で、凸部分には箔がきれいに付きましたが、凹部分では箔が付かず、かすれが発生しました。

押し付け時間を長くするとどうなる?
さらに今回は、押し付け時間を約2秒に延ばして加工しました。
しかし、押し付け時間を長くしても凹部分への箔の転写は十分に改善されず、熱が革の裏面まで伝わってしまいました。

このように、薄い革の場合は特に、押し付け時間を長くすることで裏面にまで熱の影響が出ることがあります。
箔のかすれをなくそうとして、むやみに押し付け時間を延ばすことは避ける必要があります。
サメ革への箔押しは、ベタ部分と細い線で仕上がりが変わる?
今回の試し押しでは、広い面積のベタ部分を含むデザインと、文字を使った加工結果を確認しました。
サメ革は表面のシボが深いため、ベタ部分では箔が付いているところと付いていないところの差が目立ちやすくなります。
また、細い文字や線についても、凹部分と重なる箇所では箔が途切れる場合があります。

このような素材では、箔押しの仕上がりを均一にすることだけでなく、革本来の模様を生かしたデザインにすることも検討できます。
ただし、今回の試し押し結果は、使用したサメ革と加工条件によるものです。別のサメ革やデザインでも同じ仕上がりになるとは限りません。
まとめ
シボのあるサメ革への箔押しは、凹部分のかすれに注意
今回の試し押しでは、厚さ0.7mm・0.6mm・0.5mmのサメ革に対して、ホットスタンプを使用した箔押し加工を行いました。
その結果、サメ革自体への箔押しは可能ですが、シボの凹部分には箔が付かず、かすれが生じることが確認できました。
押し圧を強くしたり、押し付け時間を長くしたりしても、凹部分への箔の転写を十分に改善することは難しい結果でした。
また、薄いサメ革では、長時間の加熱によって裏面まで熱が伝わり、にじみが発生する点にも注意が必要です。

サメ革に限らず、革製品への箔押しは、素材の厚みや硬さ、表面の凹凸によって仕上がりが変わります。
実際に加工してみなければ分からないことも多いため、本番の製品を製作する前に試し押しで確認しておくことが大切です。
焼印本舗では、お客様の素材をお預かりして加工の仕上がりを確認する「無料試し押しサービス」をご用意しています。
「この革に箔押しはできる?」「ロゴや細い文字はきれいに再現できる?」「どのような加工機材が必要?」といったお悩みがございましたら、お気軽にご相談ください。

























